ROE(自己資本利益率)は、株主が出資した資本を使って企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標であり、経営効率を測る代表的な数値です。経産省の伊藤レポートでも国内企業に対して8%以上を目指すべきとされ、決算書分析では重視されることが多くなっています。
しかし、海外ビジネスにおいて相手企業の財務状況を把握する目的は、投資判断ではありません。相手が倒産しないか、支払い能力に問題がないかを見極めるためには、ROEだけを見ても本質的な判断にはつながりません。
ROEはあくまで株主にとっての経営効率を示すものであり、企業の安全性を測る指標ではありません。投資家が企業価値を評価する際には有効ですが、国際取引の相手方としての信用力を判断する場面では、視点が大きく異なります。
海外取引で重要なのは、相手企業が安定して取引を継続できるかどうかという「安全性」です。したがって、ROEを中心に分析してしまうと、目的と指標がずれてしまい、正しい判断ができなくなる危険があります。
相手企業の倒産リスクや支払い能力を見極めるためには、経営効率よりも財務の健全性を示す指標が重要です。例えば、フリーキャッシュフロー、自己資本比率、売上高営業利益率など、安全性を測る指標こそが国際取引では中心となります。
財務分析は「指標を使えば正しい判断ができる」というものではなく、目的に合った指標を選ばなければ分析そのものが意味を失います。原理原則に基づき、目的から逆算して指標を選ぶことが不可欠です。
海外企業の財務状況を正しく把握するためには、投資家視点のROEではなく、取引の安全性を評価するための指標を用いる必要があります。目的に合った分析を行うことで、リスクを最小化し、国際取引を安定的に進めることができます。
英文契約書や海外進出の場面では、財務分析の原理原則を理解し、適切な指標を選ぶことがビジネスの成功に直結します。
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